コロナウイルスの影響により、全国の企業で経営に支障が出ており失業者が増えつつあるというニュースが散見されます。
今回の件に限らず、失業中は収入が無いことから経済的な不安を感じてしまいますね。
そんな時に心強いのが、新しい職場で働き始めるまでの生活支援という役割を持つ「失業手当(失業保険給付)」です。
本記事では、これから初めて失業手当を申請するという方でもスムーズに手続きを進められるように一からしっかり解説致します。
目次
(1)失業保険とは?対象となるのはどんな人?
(2)失業保険の申請方法
(3)注意!自己都合と会社都合の違い
(4)まとめ
(1)失業保険とは?対象となるのはどんな人?
失業保険は、正確には「雇用保険の失業保険(基本手当等)」という名称になります。
様々な理由によって会社を辞めた時に、次の会社が見つかるまで失業手当を受給することができます。
しかし、最初に気を付けたい点として失業手当は誰もが受給できるというわけではありません!
まずは自分が失業手当の給付対象にあたるか確認してみましょう。
◎雇用保険に加入している
前提として、失業保険とは離職者であれば必ず給付対象になるという訳ではなく「雇用保険」に加入していたことが必要となります。
初めて会社を辞める場合ですと「自分が雇用保険に加入していたかどうかよく分からない」と言う方もいるかもしれませんが、雇用保険に加入している場合は会社から「雇用保険被保険者証」という名刺サイズの紙が渡されているはずなので確認してみましょう。
◆雇用保険はパートの方も加入対象です!
パートやアルバイトは保険の加入対象外、として扱う企業が時々あるため誤解されがちですが
「週20時間以上勤務している場合」は非正規雇用労働者でも会社は雇用保険に入れなければなりません。
該当しているのに入っていない…と言う方は事業主やハローワークに相談してみましょう。
◎離職票を貰っている
離職票とは、退職する際に会社から渡される書類の一つになり、失業保険の申請時に必要です。
会社は従業員が退職してから1ヶ月以内に雇用保険の資格喪失手続きと併せて離職票の発行をハローワークに申請しなければいけません。
離職票がいつ貰えるか、は会社の労務担当者によってまちまちですが
早ければ1週間、遅くても1ヶ月程度で送られてくるはずなので必ず確認して下さい。
(※1ヶ月を越えても発行されない場合は会社に問い合わせてみましょう)
また、離職票の右の欄に書かれている退職理由が「自己都合」か「会社都合」のどちらを選択されているかによって
失業手当の給付期間や金額などが変動しますので、間違いないか予め確認しておきましょう!
退職理由については、後述の「注意!自己都合と会社都合の違い」もご覧ください。
◎被保険者として一定期間(最低でも6ヶ月)経過している
雇用保険は会社で働いている間のみ加入することが出来ますので、
離職すると自動的に被保険者ではなくなってしまいます。
「雇用保険に加入していること」が失業保険の支給対象に入る条件の一つと先に説明しましたが、
一瞬でも雇用保険に入っていれば失業手当が貰える、ということではなく一定期間加入していることも条件に含まれています。
こちらも後述の「(3)注意!自己都合と会社都合の違い」で説明していますので併せてご確認ください。
(2)失業保険の申請方法
自身が失業手当の給付対象か確認出来たところで、実際に申請する方法を確認していきましょう。
書類が足りなくても後から提出すると言うことも出来ますので焦らず準備することが大切です。
◎申請時に必要なもの
まずは失業手当の申請にあたって必要となる以下の書類等を用意します。
・雇用保険被保険者離職票
・マイナンバーカード(※1)
・証明写真(縦3cm×横2.5cm)×2枚
・印鑑
・本人名義の通帳またはキャッシュカード
※1 マイナンバーカードが無い場合は以下のどちらかが必要になります
・マイナンバー通知カードなどのマイナンバーが確認出来る書類
・身分証明書(運転免許証or写真付きの証明書、または被保険者証および年金手帳)
◎申請する場所
必要な書類が準備出来たら自分が住んでいる地域を管轄しているハローワークに行って申請しましょう。
給付期間中はハローワークに定期的に通い、就職活動をすることも条件として必要になりますので、申請後も何かと通うことになります。
◎申請の流れ
ここからはより具体的に申請までの流れを説明していきます。
①ハローワークに行き求職申し込みをする
記事の冒頭で説明した通り、失業手当とは次の就業先が決まるまでの生活支援を目的としていることから「就職活動を行う意思がある」ことが前提になり、働く気が無いのに手当を貰うということは出来ません。
その為、まずはハローワークの窓口へ行き求職申し込みを行うことからスタートします。
求職申し込みが受理されるとハローワークで掲載されている求人案件の閲覧や応募などが可能になります。
②雇用保険給付説明会に参加する
求職申し込みを行うと、ハローワークより「●月●日に開催される説明会にお越し下さい」という案内が来ますので参加します。
説明会では失業手当(基本手当)や職業訓練の案内、動画の視聴などがあります。
最後に「失業認定日」が知らされますので、認定日になったら再びハローワークに行きましょう。
※注意※
コロナウイルスの感染防止のため、雇用保険給付説明会の中止が案内されています。
中止期間中に失業保険の申請を行う場合は管轄のハローワークにどうしたらいいか確認して下さい。
③失業認定申告書を提出する
失業認定日になったら、「失業認定申告書」を用意してハローワークに訪問します。
失業認定申告書は説明会参加時に渡される書類になりますので事前にきちんと記入しておきましょう。
申告書は離職期間中の就職活動の状況や収入(アルバイトや内職などで金銭を得た場合)を報告する書類になり、給付期間中は定期的に提出する必要があるため忘れずに作成することが大切です。
※虚偽の申告はNG!
失業認定申告書は、失業手当を受給する資格があるかどうかを確認する書類です。
就職活動を実際は行っていないのにした、と嘘の報告をしたり
新たな就業先が決まったのに離職中の振りをして受給を続けていると「不正受給」として
支給額の3倍にあたる罰金を支払わなければならないので正確に申請しましょう。
④給付開始
待機期間後、申請時に登録した口座宛に失業手当が振り込まれるようになります。
しかし、給付が始まったらもう何もしなくていい!と言う訳ではありませんので以下の内容をしっかり守りましょう。
・ハローワークへ行き、求人情報の検索や応募などの就職活動を行うこと
・指定された認定日に合わせて「失業認定申告書」を提出すること
※給付期間中もアルバイトはしてOK!
自己都合退職の場合は、給付まで3ヶ月掛かることもあり受給期間中に短期のアルバイトなどを行うことは禁止されていません。(ただし金額や給付期間が変動する場合があります)
申告書には期間中の収入状況を報告する欄がありますので、忘れず申告しましょう。
(3)注意!自己都合と会社都合の違い
さて、失業手当の支給までの流れはご説明しましたが、申請の際に注意するべき点として「退職理由が”自己都合”か、”会社都合”か」が挙げられます。
それによって何が違うのか?をここではご紹介していきます。
◎「自己都合」と「会社都合」の違い
■「自己都合による退職」とは
自身の意思や都合により退職することを指します。
主な事例としては以下のような場合が挙げられます。
- 別の仕事(職種)を目指したいと考えたから
- 今の会社の待遇に不満があるから(給与が上がらないなど)
- 今の会社の将来に不安があるから
- 別の会社から引き合いが来たから など
■「会社都合による退職」とは
会社側の都合により退職することを指します。
主な事例としては以下のような場合が挙げられます。
- 会社が倒産したから
- 会社の業績不振により整理解雇(リストラ)を命じられたから
- 入社時に説明された内容と実際の雇用条件に違いがあったから
- 賃金の未払いが続くなど生活に影響が出ているから
- 会社の人間からパワハラ、セクハラなどのハラスメントを受けたから など
尚、会社で不祥事を起こした場合の「懲戒解雇(重責解雇)」も、会社の命令で退職することから扱いとしては会社都合退職になりますが、上記の理由と違い本人に責があることから失業手当の給付は自己都合退職と同じ処理になります。
また、自己都合でも会社都合とほぼ同等の扱いになる「特定理由離職者」と言う区別もあります。
- 家族の転勤などにより、通勤が困難になった
- 30日以上に渡り家族の介護や看護が必要となり、勤務が困難になった
- 過度な労働により肉体的または精神的な疾患が生じ、医師より退職を勧められた など
※退職理由はきちんとチェックしよう!
「会社都合による退職」は会社側にペナルティが課されることから
本来は会社都合であるにも関わらず自己都合として処理されるトラブルが多発しています。
「離職票」の退職理由に齟齬があった場合、ハローワークに異議申し立てが出来ますので焦らず問い合わせてみましょう。
「自己都合による退職」と「会社都合による退職」の違いは分かりましたが、
これが失業手当にどう影響を与えるのかと言うと「支給条件」「給付期間」「金額」「給付開始日」など様々な内容が変わります。
以下よりそれぞれご説明していきます。
①支給対象に入るための条件が変わる
先にご説明した「(1)失業保険とは?対象となるのはどんな人?」にて、雇用保険に一定期間加入していることが失業手当を受給する条件の一つだと書きました。
その「一定期間」が果たしてどれくらいなのかと言うと、これが自己都合退職・会社都合退職によって違いがあり、具体的には以下のようになります。
■会社都合で退職する場合
退職日から遡って1年間のうち、被保険者期間が通算で6ヶ月以上あればOK
■自己都合で退職する場合
退職日から遡って2年間のうち、被保険者期間が通算12ヶ月以上あればOK
このように、会社都合で退職する場合は雇用保険の加入期間が「6ヶ月以上」あればOKというように条件が緩和されていますが、自己都合で退職する場合は「12ヶ月以上」雇用保険に加入していなければ給付対象に入らないので気を付けましょう。
②給付開始日が変わる
失業手当と言うものは申請したらすぐ支給されるという訳ではなく、
自己都合・会社都合に関わらず最低でも7日間の「待期期間」というものが設けられています。
会社の都合により退職せざるを得ない状況になった方は、突然無収入になってしまうことから
生活にも大きな影響があるため既定の待期期間(7日間)が経過したらすぐに支給されますが
自己都合の場合は失業手当に依存せず早期の転職を促すという目的もあり+3ヶ月の期間が設けられています。
③給付期間が変わる
失業手当の給付期間にも違いがあり、自己都合の場合は「90日~150日」、会社都合の場合は「90日~330日」と決められています。
それぞれの給付期間は雇用保険にどれだけの期間加入していたかによって変わり、例えば新入社員として1年程度働いた会社で会社都合により退職する場合は、加入期間が短いことから90日程度が支給期間の目安となります。
④給付金額が変わる
なんといっても一番気になるのは「いくら支給されるのか」ですね。
表は最大支給額になりますが、現在貰っている給与を日額に直し、かつその金額の50%~80%が凡その「基本手当日額」となります。
(※「失業手当 金額」などで検索するとより詳細な金額が変わる計算サイトが出てきますので是非ご参照下さい)
その他にも、国民健康保険税の納付が会社都合であれば最大2年間軽減されるなどの違いもあり、失業手当を申請する上で退職理由がいかに大切かよく分かりますね。
しかし、ここまで聞くとメリットしかないように思える会社都合退職にも注意しなければいけないポイントがあり、それは「転職活動をする時に応募先の会社から理由を突っ込まれやすい」ことです。
会社の倒産や業績不振によるリストラなど明確な背景があればいいのですが、
それ以外の理由だと「本当にその理由は会社都合退職として適切なのか」を見極めるため面接時などに詳細な説明を求められることもままあります。
本人の説明では納得がいかないと判断された場合、前の会社に対して退職理由を直接問い合わせる人事担当者もいますので会社に頼んで無理に会社都合として処理して貰う、というようなことは後々を考えると辞めた方がいいでしょう。
(4)まとめ
失業保険は自身の生活にも関わることから「失敗したらどうしよう…」と普段以上に不安になってしまうかもしれません。
手続きは一見複雑に見えますが、ハローワークから貰える「受給資格者のしおり」などでも手続きの流れが丁寧に説明されていますし、不明な点はハローワークの担当職員の方に聞けば答えて貰えるので当ページの内容も参考にして焦らず手続きを行いましょう!